防火シャッターは、法律によって定期的な点検が義務付けられています。
点検をせずに放置しておくと、いざという時に正しく動作せず、多くの人の命を危険に晒す恐れがあるためです。
点検が義務化されたきっかけは、2013年に福岡市で起こった火災。
建物の防火シャッターが正常に作動せず、10名の死者を出す大惨事となりました。
本記事では、定期点検の根拠となる法律や、点検の内容、費用について解説していきます。
防火シャッターの点検は義務
定期点検が義務付けられている防火シャッターとはどんなものなのでしょうか。
通常のシャッターとは異なる防火シャッターの役割と、役割をまっとうするために欠かせない点検について知っておきましょう。
防火シャッターとは
防火シャッターは、火災の際に炎や煙を遮断し、閉じ込めるためのシャッターです。
劇場や病院、ゲームセンターやショッピングモールなど、比較的大きく、多くの人が集まる施設に設置されています。
建築基準法で定められた「防火区画」に防火シャッターを設置することで、そこから火災が広がることを防ぎます。
「防火区画」に該当するのは、主にエレベーターやエスカレーター、階段、吹き抜けなどの付近です。
防火シャッターは火災を食い止めるためのものなので、他のシャッターなどと比べて分厚く丈夫になっています。
開閉方法も他のシャッターとは異なり、火災の際には自動で下りてくる仕組みです。
自動といっても、電気やモーターを使うのではなく、シャッターの重みで下がるようになっています。
定期点検は法律で義務付けられている
防火シャッターは、2016年に改正された建築基準法により、定期的な点検と報告が義務付けられています。
それ以前にも防火シャッターの点検は、特殊建築物検査の一部として実施されていましたが、専門的な検査基準や、検査をする資格者については規定されていませんでした。
改正後は、防火シャッターを含む防火設備の専門的な検査基準が設けられ、検査できる資格者も定められました。
ビルのオーナーや管理担当者は有資格者に依頼して定期点検を行い、その後特定行政庁に報告する必要があります。
防火シャッターは、設置しているだけでは意味がなく、正しく作動してこそ役立つ設備です。
その重要性を理解した上で、定期点検と報告を行いましょう。
違反すると罰則がある
防火シャッターの定期点検は法律によって義務付けられていますが、この義務を怠ると罰則があります。
特定行政庁からの是正命令を受けたにもかかわらず、それに違反した場合は、3年以下の懲役または300万円以下(法人の場合は1億円以下)の罰金。
無報告の場合、もしくは虚偽の報告を行った場合には100万円以下の罰金が定められています。
義務化の背景は2013年の福岡市での火災
防火シャッターの定期点検が義務化されたのは、2013年10月に福岡市の診療所で起きた火災がきっかけでした。
この火災では防火扉が正しく作動しなかったために被害が拡大し、10名もの死者を出す大惨事となりました。
また同年の2月に長崎市のグループホームで火災が発生し、4名が死亡。
この件に関しても、防火設備の不備が指摘されました。
これらの痛ましい出来事を受け、防火設備の維持管理の重要性を訴える声が高まり、2016年には建築基準法が改正。
防火シャッターの点検が義務化され、厳しい罰則も設けられられたのです。
防火シャッターの法定点検の内容と費用
防火シャッターの定期点検は、防火扉、耐火クロススクリーン、ドレンチャー等と併せて、「防火設備検査」の中で実施されます。
費用は委託する業者によって異なるため、事前に数社から見積もりをとって比較検討しましょう。
点検を行うのは有資格者
防火設備検査は専門知識と技術を要するため、実施できるのは一級建築士、二級建築士、防火設備員のうち、いずれかの資格を持つ人のみと定められています。
防火設備検査員は、感知器連動で動く防火扉や防火シャッター等、防火設備の検査を行うための資格。
建築基準法改正によって防火設備定期検査が義務化されたことによって新たに導入されました。
防火シャッターを設置しているビルのオーナーや管理責任者は、資格を持つ専門業者に定期点検を依頼します。
防火シャッターの点検内容
防火シャッターの点検内容は、設備の駆動装置や感知器、危害防止装置の動作確認まで、多岐にわたります。
中でも主だったものを、下記に3つ紹介します。
-
- シャッター・スクリーンの駆動装置の確認
実際に見たり触ったりして、部品の故障や変形がないか、異音はしないか検査します。
- シャッター・スクリーンの駆動装置の確認
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- 煙、熱感知器との連動閉鎖確認
スイッチに破損はないか、断線などがないか、目視で確認。
感知器は設置している場所をチェックし、さらに作動するか目視や音で調べます。
- 煙、熱感知器との連動閉鎖確認
- 危害防止性能の確認
危害防止性能とは、防火シャッターに設置を義務付けられた危害防止装置の性能のことです。
重く、自動で閉まる防火シャッターに、人が巻き込まれる事故を防ぐために確認を行います。
劣化や損傷・腐食がないか、目視し、スイッチ操作で動作確認をします。
点検後にビルオーナーや管理者が行うのは、地方自治体の特定行政庁への報告です。
報告内容によっては特定行政庁からの是正命令を受けることがあります。
是正命令を受けた場合には、それに従って是正を行いましょう。
防火シャッターの点検費用
防火シャッターを定期点検する費用は、1枚あたり6000円前後を目安に考えましょう。
ここに基本料金や提出代行費などの各費用が加算されていきます。
防火設備定期検査の各種費用の目安は以下の通りです。
検査項目 | 費用 |
基本料金 | 10,000円~35,000円 |
受信機・連動操作盤 | 5,000円~25,000円 |
防火扉 | 1,500円~2,500円/枚 |
防火シャッター | 4,000円~8,000円/枚 |
耐火クロススクリーン | 4,000円~8,000円/枚 |
煙感知器・熱感知器 | 100円~200円/個 |
上に挙げた金額はあくまでも目安であり、実際の価格は依頼する業者ごとに異なります。
委託先を選ぶ際には、まず数社から見積もりを取り、比較検討すると良いでしょう。
防火シャッター以外も点検を
防火シャッターは定期点検が法律により義務付けられていますが、それ以外のシャッターにも点検は必要です。
通常のシャッターも、安全管理を怠れば事故につながる危険性があります。
自分で行う日常点検に加え、専門業者による定期点検も行い、事故の芽は早めに摘んでおきましょう。
自分でできるシャッターの点検
自身でも無理のない範囲で、シャッターの日常的な点検とメンテナンスを行いましょう。
メンテナンスの際には、必ずシャッターを止め、安全に留意して行う必要があります。
自身で点検をする際には、以下のポイントに注目しましょう。
- 異音はしないか
- 変形はないか
- 停止してからスラットが滑り降りてこないか
- シャッター降下線上に阻害物が置いていないか
- 全開・全閉・任意の位置で止まるか
- 操作スイッチの扱いやすさ
- 安全装置とセンサーの作動は正常か
異音の原因は、レールの汚れや潤滑油切れの可能性もあり、掃除や注油で改善することもあります。
改善しない場合は、シャッターの使用を止め、周囲に人が近づかないようにして、専門業者に相談しましょう。
>シャッターのメンテナンス方法とは?お手入れの仕方やサビへの対処法も詳しく解説!!
専門業者による定期点検も重要
個人での点検やメンテナンスにはできることに限りがあります。
通常のシャッターでも、安全で快適に使い続けるためには、専門業者による定期点検が必要です。
特に高所作業や電気的な作業が必要な場所の点検は危険が伴うため、くれぐれも自分では行わないでください。
また、自身では気づかないほど小さな不具合でも、放置しておけばより大きな故障に繋がることがあります。
定期的に専門家の点検を受け、程度が軽いうちに対処することができれば、結果的に修理費用を抑えることに繋がります。
シャッター 点検 まとめ
防火シャッターは、火災の被害を最小限に食い止め、命を守る重要な役割を担う設備です。
そのため、有資格者による定期点検の実施と、点検内容の報告が法律によって義務付けられています。
防火シャッター以外のシャッターにも故障のリスクはあるため、定期的な点検は欠かせません。
自分で出来る範囲で点検やメンテナンスを行った上で、専門業者にも定期点検を依頼すると安心です。